カタクリの群生 ~ 春の妖精

みどりいろの通信

スプリング・エフェメラル(春の妖精)のひとつであるカタクリの花が咲き出しました。


カタクリ(片栗)
学名: Erythronium japonicum
ユリ科カタクリ属に属する多年草。
英名 Katakuri Dogtooth violet  、 Dog’s-tooth-violet
別名 : カタコ、カタカゴ(堅香子)、カタコユリ、カタバナ、カッコバナ、ヤマカンピョウ

春の到来への喜びと希い ~宮澤賢治の作品から

北山山地の春 3

かぐはしい南の風は
かげろふと青い雲滃を載せて 
なだらのくさをすべって行けば 
かたくりの花もその葉の班も燃える 
黒い廏肥の籠をになって 
黄や橙のかつぎによそひ 
いちれつみんなはのぼってくる 

みんなはかぐはしい丘のいたゞき近く 
黄金のゴールを梢につけた 
大きな栗の陰影に来て 
その消え残りの銀の雪から 
燃える頬やうなじをひやす 

しかもわたくしは 
このかゞやかな石竹いろの時候を 
第何ばん目の辛酸の春に数へたらいゝか

(宮澤賢治・『春と修羅 第二集 』 より)

早春にうつむきかげんの紅紫色の花をつけるカタクリの花を、賢治さんは好んでその作品に登場させています。春が来たことへの喜びや、人々への希いが感じることができます。

かたくりの 葉の斑は消えつあらはれつ 雪やまやまのひかりまぶしむ

(宮沢賢治「歌稿四六五」より)
 そして日あたりのいゝ南向きのかれ芝の上に、いきなり獲物を投げ出して、ばさばさの赤い髪毛を指でかきまはしながら、肩を円くしてごろりと寝ころびました。
 どこかで小鳥もチツチツと啼き、かれ草のところどころにやさしく咲いたむらさきいろのかたくりの花もゆれました。

(宮沢賢治『山男の四月』より)

やわらかな甘みのカタクリを食べる

花ごと根の生え際から葉を摘み採り、熱湯でさっと茹でて冷水にくぐらせるだけでアク抜きは完了です。

酢の物や和え物にしたり、煮物、炒め物、天ぷらなど色々楽しめます。

ただし、食べ過ぎるとお腹が緩くなりやすいので、多食は避けてください。

薬用としてのカタクリ

地中の鱗茎には良質のデンプンが含まれており、これを抽出精製したものが片栗粉。

5~6月頃に鱗茎を掘り採り、外皮を除去してすり鉢で砕き、水を加えて布で漉して、白く濁った水を沈殿させる作業を繰り返してデンプンを抽出していきます。

これを風邪や下痢、腹痛のときに葛湯のようにして飲用したり、擦り傷やできもの、湿疹に粉を塗布したりして薬用に利用してきました。

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